大陽日酸株式会社(社長 CEO:市原裕史郎)では、超音速の酸素ジェットで省エネルギーを達成する「SCOPE-Jet
Ⓡ」に、高温酸素を組合せて更に高機能化した、「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」を開発しましたので、お知らせいたします。
記
1.開発の経緯
電気炉製鋼プロセスにおいて酸素バーナは、1960年代に急速に普及し、現在では多くの電気炉で設置・使用されています。電気炉での酸素バーナの機能は、炉内のコールドスポットの加熱による溶解促進であり、主に固体鉄スクラップを溶解する溶解期に使用されてきました。
近年は、超音速の酸素ジェットの周囲に火炎を形成する事で、従来の酸素ジェットに比べ、その速度及び濃度の減衰を大幅に抑制するバーナランスが提案されています。このバーナランスの採用により、従来精錬期において作業者がその都度消耗型ランス等で直接溶鋼へ酸素を吹き込んでいた作業を置き換える事ができ、効率的な電気炉操業が可能になります。
当社も、高速酸素バーナランス「SCOPE-Jet
Ⓡ」を2001年より電気炉製鋼プロセス向けに展開しており、一昨年12月には、さらに性能を向上させ、マッハ2の噴出速度に対応し、かつ低圧・低カロリーの燃料にも対応した、新型「SCOPE-Jet
Ⓡ」を開発しました。(2017年12月25日付当社
ニュースリリース)
この度、超音速の酸素ジェットで電気炉プロセスの省エネルギーを達成する「SCOPE-Jet
Ⓡ」の酸素を予熱することで、より高速な超音速流を形成する「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」を開発しました。高温の酸素ジェットを利用することで、従来よりも短時間での熔解を可能とします。(図1)
図1 SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeatの火炎
2.技術の概要
「SCOPE-Jet
Ⓡ」では、ノズル近傍の超音速酸素噴流周囲に火炎を形成することで噴流周囲の雰囲気温度を上昇させるため、酸素噴流に対する周囲の密度が小さくなり、超音速ジェットの減衰を抑制することができます。常温のまま酸素ジェットを高速にする場合、より高い供給圧力が必要となりますが、「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」では予熱された高温の酸素を用いることにより、供給圧力はそのままに、超音速噴流を更に高速化することを実現しました。電気炉において酸素ジェットの速度は熔解性能や熔鋼への貫通力向上に寄与するため、更なる時間短縮が期待できます。
「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」は、予熱用バーナによる燃焼ガスと超音速ジェット用の酸素を混合させる直接燃焼方式で高温の酸素を生成します。(図2) この方式は、電気式や熱交換式の予熱装置と比較して、コンパクトな筐体で、短時間での予熱が可能なため、例えば電気炉製鋼プロセスの助燃用バーナの様に、短時間での運転・停止を行う場合でも、十分に運用が可能です。
図2:SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat の模式図
3.適用例
「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」は、高温、高速の酸素ジェットにより従来型の「SCOPE-Jet
Ⓡ」に比較してより高い加熱・溶解性能を有しており、溶解時間を最大で50%短縮できます。(図3、4)
また、従来の「SCOPE-Jet
Ⓡ」同様に、超音速の酸素ジェットを形成しますので、電気炉製鋼プロセスの助燃用バーナとして、スクラップの溶解、及び溶けた鋼の精錬において、その機能を如何なく発揮し、生産性向上や電力原単位削減に大きく寄与します。
図3 「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」が鋼板を熔解する様子
図4 試験結果
4.今後の展開
大陽日酸ではこれまでに、電気炉製鋼プロセス向けに、「SCOPE-Jet
Ⓡ」シリーズを展開してきました。基幹となる「SCOPE-Jet
Ⓡ」に加え、幅広い面積を加熱しコールドスポット解消に効果を発揮する、超音速のジェットをスイングさせた「SCOPE-Jet
Ⓡ Swing」を有しており、これらのラインナップに、「SCOPE-Jet
Ⓡ OxHeat」が加わる事で、更なる電気炉製鋼プロセスの生産性改善が期待できます。
「SCOPE-Jet
Ⓡ」シリーズに代表される燃焼技術を用いて、鉄鋼分野を中心として、更なる応用展開を図っていきます。
以 上
本件に関するお問い合わせ
大陽日酸株式会社
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TEL: 03 5788 8015
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