コーポレートガバナンス

基本的な考え方

日本酸素ホールディングスは、コーポレートガバナンスの指針となるコーポレートガバナンス原則を取締役会で制定しています。持続的な成長及び長期的な企業価値の向上のため、株主、お客さま、社員、サプライヤー、地域社会などすべてのステークホルダーの利益のために、意思決定の透明性・公正性を確保します。また、保有する経営資源を有効に活用し、迅速・果断な意思決定により経営の活力を増大させることがコーポレートガバナンスの要諦であると考え、コーポレートガバナンスの充実に取り組んでいます。

コーポレートガバナンス強化の変遷

2015
6月 意思決定迅速化のため、定款に定める取締役会の員数を削減(20名以下→15名以下)し、取締役を減員(16名→11名)、独立社外取締役を2名選任
6・7月 コンプライアンスの実効性確保のため、チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)を選任CCOを補佐する内部統制推進室を設置
10月 コーポレートガバナンス原則、ディスクロージャー方針を制定
2016
6月 役員等の選任・報酬決定の透明性、客観性向上のため、会長、社長(CEO)及び独立社外取締役からなる指名・報酬諮問委員会を設置
中期的な成長に向けたインセンティブとして、役員報酬に中期経営計画の成果を反映した業績連動報酬を導入
2017
6月 業務の執行と監督の分離をさらに進め、取締役会の監督機能を強化するため、取締役を10名から7名(うち独立社外取締役2名)に減員
2018
2月 グループとしてのコンプライアンス推進体制強化のため、チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)と、北米・東アジア・台湾・東南アジア・インド・豪州に各地域CCOを任命。加えて、グループ内の統一基準と言えるグローバル・コンプライアンス管理規程を制定。グループ内の法令遵守状況、訴訟等の進捗及び個別テーマについての情報共有を目的とした、CCOが主催する各地域CCO間の連携会議である「グローバル・コンプライアンス・コミッティ」を開催
6月 技術リスクマネジメントの観点から、保安教育や技術伝承を目的としたグループ内研修施設「テクニカルアカデミー」を開設
2019
3月 欧州に地域CCOを任命
6月 多様な視点から監督と意思決定を行うグローバルな経営体制を強化するため、米国ガス事業の責任者である Thomas Scott Kallman(Matheson Tri-Gas, Inc. Chairman & CEO)と欧州ガス事業の責任者である Eduardo Gil Elejoste(Nippon Gases Euro-Holding S.L.U. Chairman & President)を新たに取締役に選任
2020
10月 持株会社体制に移行し、「日本酸素ホールディングス株式会社」に商号変更
2021
6月 取締役会の多様化と監督機能の強化のため、新たに独立社外取締役を1名選任(2名→3名)し、独立社外取締役比率が3分の1に向上
2022
6月 取締役会の多様性の推進と業務執行監督機能の強化のため、新たに独立社外取締役を2名選任(3名→5名)し、独立社外取締役比率が過半数に到達

取締役会の実効性評価について

当社は、「コーポレートガバナンス原則」において、「取締役会は、各取締役の自己評価に基づき、毎年、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を適時適切に開示する」と定めています。当社取締役会は、取締役会の実効性の分析・評価を行い、継続的にその実効性を高める努力を続けています。2023年3月期の取締役会実効性評価の概要、およびその結果を踏まえた2024年3月期の主な取り組み等は、以下のとおりです。

コーポレートガバナンス体制

当社のガバナンスにおいて特徴的な点は、消費地において生産を行う産業ガスのビジネスモデルを支えるグローバル4極+サーモスの各事業会社に対して権限委譲を行うことにより、迅速な意思決定と適切な経営資源の配分を行っている点です。グローバルに事業を展開する当社グループは、経営判断及び業務執行の監督にあたっては、より現場に密接した専門知識を基として、幅広いリスクを多面的に評価することが必要となるため、M&A・投資などの一定規模以上の業務執行の決定を取締役会が行い、また、監査役が自ら監査を行う「監査役会設置会社」を採用しています。

会議体 

会議体 概要
取締役会 議長:代表取締役社長 CEO
構成:取締役9名、うち過半数(5名)は独立社外取締役。外国人取締役、女性取締役がそれぞれ2名
的確な経営判断を可能とするため、スキルや経験の観点から、取締役構成における多様性に留意しています。取締役会は原則毎月1回定期に開催され、重要事項がすべて付議されるとともに、業務執行状況についても報告されています。また、代表取締役による業務の執行を監督します。

監査役会 構成:常勤監査役4名、うち社外監査役3名(うち独立社外監査役2名)
株主の負託を受けた独立の機関として諸法令、定款及び諸規程等に基づき、取締役の意思決定の過程や経営執行状況の監査を行っています。各監査役が有する専門的知見に基づき、中立的・客観的な視点から、各人が監査活動を行っています。監査活動の結果については、監査役会で十分に議論した上で、必要に応じて提言を行い、経営の健全性確保に努めています。監査役会では、毎年、監査役会で決定した監査方針・監査計画に従い、①取締役会、経営会議など社内の重要会議への出席②取締役、執行役員など経営幹部との面談③重要な決裁書類などの閲覧④日本、海外のグループ会社の監査等の活動を行っています。また、内部監査部門、内部統制部門及び会計監査人との密接な連携、社外取締役との定期的な情報交換や意見交換などを通じて、監査の実効性の向上を図っています。なお、独立した監査役会事務局を設置し、監査役の指揮を受け、監査役の職務を補佐する専任の社員を配置しています。

指名・報酬諮問委員会 委員長:長澤 克己氏(独立社外取締役)
構成:代表取締役社長 CEO及び5名の独立社外取締役
取締役・監査役候補の選任、代表取締役社長 CEO及び執行役員の選解任、代表取締役社長 CEOの後継者の選任、重要直接出資子会社の会長及び社長の選解任ならびに取締役報酬内規の改訂について取締役会から諮問を受け、審議の結果を取締役会に答申しています。同委員会の過半数を独立社外取締役とすることにより、経営陣の選任について親会社からの独立性を担保するとともに、取締役会の意思決定の透明性と客観性を確保することに努めています。
経営会議 議長:代表取締役社長 CEO
構成:代表取締役社長 CEO、執行役員、及び監査役等
取締役会の定める当社グループの経営の基本方針に基づいて、代表取締役社長が業務を執行するにあたり、経営に関する重要事項について審議・決裁を行います。
グローバル戦略検討会議(原則年1回) 議長:代表取締役社長 CEO
構成:代表取締役社長 CEO、執行役員、室長、監査役、及び議長が指名する者
当社グループの次年度予算の決議を行う前に、同会議で各事業会社の戦略について詳細を確認するとともに、グループ全体での最適な資源配分についての審議を行っています。また、当社グループの経営戦略の策定及び進捗管理を行います。同会議で決定された事項のうち技術リスクに関する事項については、日本酸素HDと各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議などで具体的な対応策が決定され、グローバルに展開しています。
グローバルリスクマネジメント会議(原則年1回) 議長:代表取締役社長 CEO
構成:代表取締役社長 CEO、監査役、グループCCO*、執行役員、室長、各事業会社社長等地域リスクマネジメント統括責任者、及び議長が指名する者
当社グループの重要リスクの選定、対応に関する事項、全社的なリスクマネジメントの基本方針、規程及び計画に関する事項などについて審議を行います。

* CCO:チーフ・コンプライアンスオフィサー

グローバル・コンプライアンス・コミッティ(原則年1回) 議長:グループCCO*
構成:地域CCO*(日本、北米、欧州、東アジア、東南アジア&インド、豪州、台湾の各地域)
グループCCOによるグループのコンプライアンスの実効性をより確かにするために、コンプライアンス推進方針及び各地域でのコンプライアンス推進活動の内容を共有するとともに、必要に応じて個別の課題に関する審議を行います。

* CCO:チーフ・コンプライアンスオフィサー

年間スケジュール

親会社との関係性

親会社である三菱ケミカルグループ株式会社(以下、MCG)とは、2014年5月13日付で基本合意書を締結していますが、当該基本合意書において、MCGは、同社のグループ経営規程の下、当社グループの自主性を尊重し、当社を全面的に支援及び協力することを規定しており、当社グループでは、経営管理、財務、営業、研究開発など事業機能すべてにおいて、自主自立で運営しています。

また、当社の取締役は、親会社と親会社以外の株主の利益が相反する場面では、親会社以外の株主の利益が害されることのないように行動しています。当社は、独立社外取締役5名及び常勤の独立社外監査役2名を選任しており、これらの者が親会社と親会社以外の株主の利益相反が生じないよう監督しています。さらに当社では、自主的に指名・報酬諮問委員会※を設け、経営陣の選任について親会社からの独立性を担保しています。なお、親会社であるMCGは持株会社ですが、同社の主要な事業会社である三菱ケミカル株式会社と当社グループの取引高は2023年3月期で7,058百万円です。

※取締役や監査役の候補者の指名、CEOその他執行役員の選任及び解任などについて、取締役会が諮問する当社任意の委員会です。

役員の選任について

取締役会をより実効的に機能させるため、当社の役員は、企業経営において必要となる知見や経験を持つ多様な人財で構成される必要があると考えています。そこで、当社グループの経営に重要な役割を果たす知見や経験を定義し、以下のとおりスキルマトリックスとしてまとめております。これらの知見や経験を有する人財を適時適所で配置しながら、取締役会の実効性を一層高めていくことに努めます。
取締役会は取締役候補の選定を指名・報酬諮問委員会に諮問し、指名・報酬諮問委員会は、取締役会の構成、取締役に求められる資質及び重任者についてはこれまでの取締役としての活動内容と実績を考慮した上で取締役候補者のリストを作成し、取締役会に提案します。
また、当社は、社外取締役・監査役の独立性に関する判断基準を定めており、当該基準を満たす者を役員候補者として選定しています。

役員報酬について

取締役及び監査役の報酬等は株主総会の決議により、取締役全員及び監査役全員それぞれの報酬限度額を決定しています。各取締役の報酬額は、取締役会の一任を受けた代表取締役社長 CEOが取締役会で決議した報酬基準に基づき決定し、各監査役の報酬額は、監査役の協議により決定します。なお、当社は複数の独立社外取締役及び代表取締役社長 CEOで構成され、社外取締役を委員長とする指名・報酬諮問委員会を設置しており、取締役及び監査役の報酬制度の妥当性については、取締役会及び監査役会からの諮問を受け、本委員会で審議し、その結果を取締役会及び監査役会に答申しています。取締役の報酬は、役位別の固定報酬である「基本月例報酬」、業績に連動して変動する「業績連動報酬」、および中期経営計画で掲げた非財務指標のうち休業災害度数率ならびにコンプライアンス研修受講率の達成度に連動して変動する「非財務指標連動報酬」からなり、各人の支給額に反映しています。
また、子会社の役員を主たる職務としている取締役、及び社外取締役については、当社の取締役報酬として固定報酬である「基本月例報酬」のみを支給しています。

社外監査役を含む監査役の報酬は固定報酬となっています。

サクセッションプラン

次世代経営者の育成

当社グループのガバナンス体制において、次世代経営者の育成は重要な課題であると認識しています。現在、指名・報酬諮問委員会で次世代経営者の育成計画について議論を重ねており、当社グループに必要となる次世代経営者の資質や育成方針について検討しています。当社グループはグローバルに事業を展開しており、日本だけでなく海外においても経験を有し、事業に精通している人財を今後さらに育成していく必要があります。

また、欧州では女性の部長職の層が少ないという課題意識があり、女性を対象にしたサクセッションプランを積極的に実施しています。2020年10月から約15人の参加者に対し、社長も含めたマネジメント陣が1人ずつメンターとして付き、トップマネジメントが自らの過去の経験や、困難なときにどう対応したかということをアドバイスしながら、1年半のプログラムを実行しました。こうした欧州の取り組みを先進事例として共有し、各地域に横展開していきながら、次世代経営者の育成に取り組んでいきます。

トップマネジメント研修

当社では、さらなるグローバル経営の加速において、トップマネジメントに求められる多様な知識や視点からの経営判断力を養うために、トップマネジメントの能力開発を図る研修制度を継続的に実施しています。2021年11月には、「役員として理解しておくべき内部統制システム」と題して、当社ならびに大陽日酸の常勤取締役、監査役及び執行役員を対象に、最新のコーポレートガバナンスを巡る法令について理解を深め、具体的な近時の企業不祥事を念頭に、内部統制システム(リスク管理)の要諦、法令に基づく実務対応の重要性について再認識するための研修を実施しました。

コーポレートガバナンスの対応状況について

また、以下のとおり、当社のコーポレートガバナンスの対応状況を記載した「コーポレートガバナンスに関する報告書」を東京証券取引所に提出しております。(以下は2023年11月15日に提出したものです)