TCFD提言に基づく報告

日本酸素ホールディングスは、2019年11月にTCFD※への賛同を表明しました。当社グループは、これまで環境負荷低減や省エネルギー活動の推進、GHG排出量削減に貢献する製品の拡大に取り組んできましたが、TCFDの最終提言を踏まえ、これらの取り組みの充実化とともに、関連する情報開示を段階的に拡充し、グループ全体で企業価値向上に努めていきます。

※TCFDは2017年6月に最終報告書を公表し、企業などに対し、気候変動関連リスク及び機会に関するガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の項目について開示することを推奨しています。

ガバナンス

気候変動課題に関するガバナンス体制を構築し、グループ全体で気候変動に対する取り組みを行っています。

戦略

マテリアリティとして特定した気候関連に関して、TCFDの提言に基づき「移行シナリオ」「物理的気候シナリオ」による機会・リスクの洗い出しを行いました。
当社にとって財務的に大きなインパクトを与えるマイナスの影響をリスクと捉え、プラスの影響を機会と捉えています。「移行シナリオ(2℃未満シナリオ)」、「物理的気候シナリオ(4℃シナリオ)」による短期(~2025年)・中期(2025~2030年)・長期(2030~2050年)の時間軸を考慮し、機会・リスクの洗い出しを行い、各リージョンでの主にガスビジネスにおけるこれらの機会・リスクに対して〔影響を受ける可能性〕×〔影響の大きさ〕の指標を基に評価を行いました。

「移行シナリオ」には、国際エネルギー機関(IEA)のSustainable Development Scenario(SDS)、「物理的気候シナリオ」には国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書(2014年発表)による地球温暖化シナリオ(RCP8.5)を参考にし、インパクト分析を行いました。

当社グループの機会・リスクを整理し、調達、操業、製品・サービスにおいて考えられるインパクトを分析、統合化した結果を下記に示します。

タイプ 気候変動リスク項目 評価 事業リスク 事業機会 当社の対応
移行 政策規制 カーボンプライシング制導入 <中長期>
>税負担の増加に よる収益減少
<中長期>
>早期対応の差別化による事業機会獲得
>PPAやグリーン電力証書による再生可能エネルギーの導入拡大
技術 低炭素な代替製品への置換・省エネの進展 <中長期>
>低炭素製品選別 による既存商材の 売上減少
<短中期>
>省エネによる利益幅増大
>低炭素化に資する既存製品の需要拡大
<中長期>
>低炭素化に寄与する環境貢献製商品の事業企画拡大
>環境貢献製商品の開発促進
>DX技術の導入などの生産性改善による省エネルギー化促進 (SAITEKI導入、配送最適化)
市場 市場ニーズの変化
顧客の事業活動の変化
<長期>
>既存顧客である鉄鋼・化学セクターのプロセス変更に伴う売上減少
>水電解プロセスの需要拡大に伴う副生O2ガスを活用した新規参入による売上減少
<中長期>
>ブルー/グリーンH2需要の拡大
>グリーン燃料の需要拡大
>CCUSに向けたCO2回収需要の拡大
>カーボンフリー(H2、NH3)燃焼技術の導入推進/拡大
>酸素燃焼の利用拡大
>CCUSに対応した中規模CO2回収需要の獲得
>HyCO事業によるH2供給事業の拡大
>環境貢献製商品の拡販
評判 業界批判 <中長期>
>GHG排出企業への投資家評価低下
<中長期>
>GHG削減貢献を示すことで安定した資金調達の継続
>統合報告書などによるGHG貢献の定量データの開示
>非財務情報の開示促進
物理 急性 災害の激甚化
台風頻発
豪雨・干ばつ
<中長期>
>異常気象に伴う災害による工場の操業停止
>支払保険料の増加
>災害対策の推進
>保険の活用
慢性 海面上昇
平均気温の上昇
<長期>
>気温上昇に伴う空気分裂装置のランニングコスト増による収益幅減少
<中長期>
>疾病治療に対する医療製品の需要拡大
>老朽化の進んだ空気分離装置のリプレースによるランニングコスト低減
>医療用酸素等の提供

リスクマネジメント

グループ全体でリスク管理体制を構築。気候関連リスクを特定・評価し、マネジメントしています。

気候関連リスクの特定・評価、マネジメントプロセス

リスクの特定・評価、マネジメントのプロセス
  • グローバル戦略検討会議
  • グローバルリスクマネジメント会議
  • 技術リスク連絡会議
  • 長期リスクの早期発見とその顕在化の防止、また顕在化したときに迅速な対応ができるよう、当社グループ各社でリスク管理体制を構築
  • リスクの重要度は、発生頻度×財務または戦略面への影響度により決定
  • 年1回開催のグローバル戦略検討会議(議長:CEO)により、事業に関する財務または戦略面での影響を決定
  • グローバル戦略検討会議で決定された事項は、当社と各事業会社間で開催する技術リスク連絡会議で具体的な対応策が決定され、グローバルに展開

指標と目標

中期経営計画において、リスクと機会を評価しマネジメントするために使用される指標と目標を設定し、進捗を評価していきます。

取り組み内容 開示内容
  • Scope1、Scope2、Scope3のGHG排出量を開示しています。
  • 中期経営計画での非財務KPIを開示しています。