対談② Welcome NGE! グローバル・サステナビリティの推進に向けて

執行役員 技術・環境統括室長 兼 Chief Sustainability Officer (兼 大陽日酸(株) 執行役員 技術本部長)三木 健とOperations & Safety Director Nippon Gases Euro-Holding S.L.U.Inaki Uriarte(イナーキ・ユリアテ)の写真

執行役員 技術・環境統括室長 兼 Chief Sustainability Officer
(兼 大陽日酸(株) 執行役員 技術本部長)
三木 健

Operations & Safety Director Nippon Gases Euro-Holding S.L.U.

Inaki Uriarteイナーキ・ユリアテ

2018年12月から当社グループの一員となったNippon Gases Euro-Holding S.L.U.(以下、NGE)のOperations & Safety Director イナーキ・ユリアテと日本酸素ホールディングスの執行役員 技術・環境統括室長 兼 CSO(Chief Sustainability Officer)三木 健が、新生・日本酸素ホールディングスグループが今後協調して取り組むべきサステナビリティ課題などについて語り合います。

グローバルなシナジーの追求

三木:当社グループでは、2015年から年1回「安全会議」を開催しています。海外各社の保安責任者が一堂に会し、安全対策についての情報・意見交換を行っているわけですが、イナーキさんは2019年に初めて参加されて、どのような印象を持たれたでしょうか。

ユリアテ:私も同僚たちも非常に刺激を受けました。日本、米国のMatheson Tri-Gas, Inc.(以下、MTG)、それにアジアのグループ会社の人々が、実に活発な意見交換をしていました。グループ全体でこのようにお互いの経験を共有するのは大変素晴らしいことだと思います。

三木:2019年は日本開催ということで、川崎水江事業所内の「テクニカルアカデミー」も見ていただきましたが、いかがでしたか。

ユリアテ:「テクニカルアカデミー」については、NGEの社長とCFOから以前から噂を聞いていたのですが、プロの知見が詰まった実験やデモンストレーションを体験して、非常に感銘を受けました。特に印象的だったのは、酸素過多あるいは欠乏、断熱圧縮に伴う発火、感電など、高圧ガスを扱う現場で起こりうるさまざまな事故・トラブルを想定した実験です。すべての危険体感装置は、VRを使用することにより現場で起こりうるリスクをシミュレートしていました。こうした経験、学びの場はNGEでもぜひつくっていきたいと考えています。

三木:産業ガスを取り扱う企業として、安全の確保は大前提です。また、安全に限らず、日本と欧州ではやり方が違う面があり、我々が学ぶべき事柄もたくさんあります。双方のベストプラクティスを共有し、お互いによりよいシステムをつくっていくことが大切なので、イナーキさんからもぜひ積極的なアドバイスをいただきたいと思います。

ユリアテ:私たちにも日本から学ぶところが多々あります。それは第一に特殊ガスの扱いをめぐる知見で、日本側から懇切丁寧なサポートを受けています。それから第二に、HyCOに関する知見で、これはMTGからもたらされるシナジーです。一方、NGEがグループに貢献できるのは、各種のスタンダードに関わるナレッジの提供だと思います。オペレーションや保安面、健康・衛生面、品質面などの知識を今後さらに深めつつ、ホールディングスと協調してそのスタンダード化に努めていきたいと考えています。知識とは普遍的なもので、どんな場所でも適用可能です。ですから、例えば特殊ガスについては日本、HyCOについては米国に知識を集約し、それをグループ全体で共有して融通し合う形がよいと思います。逆にすべての地域であらゆる知識や機能を揃えようとしたら、かえって効率が悪くなってしまうでしょう。

三木:貴重な提言をありがとうございます。NGEのグループ参加は、日本だけでなく米国のMTGやアジア各社にも非常に大きなプラスになっています。これからもぜひ統合によるシナジー効果を追求していきたいと思います。

サステナビリティ開示のあるべき姿

三木:社会の意識の変化を受けて、ESGやSDGs対応など非財務の開示や取り組みの充実が企業の大きな課題になっています。欧州はサステナビリティへの関心が非常に高い地域ですし、NGEは先頃2020年3月期のサステナビリティ報告書を出されたところですので、欧州における取り組みについてご説明いただければと思います。

ユリアテ:サステナビリティ報告書は、欧州では財務報告と同じく大企業に発行が義務付けられており、最低限開示すべき内容も決められています。サステナビリティ報告書はウェブ上で公開され、すべてのステークホルダーが見ることができます。私たちの活動についてこうした人々の理解を得ることは、非常に大切です。ということで、まずはフレームワークの策定、次にステークホルダーの関心の所在の特定、といった作業を系統立てて進めました。一言で言えば、私たちはこのレポートをマーケティングツールとして使えるものにしようと考えたのです。フレームワークづくりにおけるポイントは、社内にサステナビリティ委員会を立ち上げたことです。社長、CFO、CCO※1、CHRO※2、それに調達、品質、マーケティング、保安、グループ統合担当の各役員など13人のメンバーで構成され、週に1回の会合を10週間重ねました。各メンバーはそれぞれチームを編成し、会合から持ち帰った課題を検討しました。計70日間の作業に約50人が関わり、監査役やコンサルタントから150以上の質問を受け、原稿を6回書き直しました。サステナビリティ報告書とは、1年に1回レポートを発行してそれで終わり、ではありません。さらなる改善を図りつつ、ずっと継続していくべき活動です。NGEはSDGsの全17目標のうち8つにコミットしており、うち7目標はホールディングスと共通です。エネルギー効率、コミュニティへのエンゲージメント、コンプライアンス、安全性などを特に重視しつつ、ビジネスを絶えず改善し、そのことをステークホルダーに伝えていきたいと思います。

三木:2020年3月期のレポートを私も読みましたが、非常によく練られた内容でした。我々もぜひ皆さんの取り組みを参考にしていきたいと思います。この分野での当社の取り組みはまだまだ発展途上ですが、今回のホールディングス化を機に、対応を抜本的に強化していきます。2019年はTCFD※3への賛同表明を行い、2020年からCDP※4の調査にも個別対応しています。この統合報告書でも、サステナビリティ関連の記述を充実させました。今後の課題としては、3つのポイントがあると思います。第一に非財務データの情報開示の拡充で、この統合報告書でもこれを試みています。第二に、各種の方針やポリシーの体系的な整備と開示。現在運用しているマテリアリティ・マトリックスについても、見直しを加えていく予定です。それから第三にKPIの設定。目標値を定めてPDCAサイクルを回すことが重要です。これに関しては次期中期経営計画の中で、具体的に推進していきたいと考えています。

ユリアテ:KPIに関しては、まず全体像を把握した上で、評価対象を絞り込むのがいいでしょう。例えばNGEには全部で106の施設があるのですが、エネルギー消費の95%以上は、そのうち27の施設によるものなのです。こうした全体像を押さえた上で、どの施設やプロセスのデータを追いかける必要があるのか、しっかり見極めることが重要だと思います。

※1 Chief Compliance Officer
※2 Chief Human Resources Officer
※3 気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)。金融安定理事会(FSB)により設置。企業などに対し、気候変動が財務面にもたらす影響(リスク・機会)の開示を推奨
※4 英国で設立されたNPO(旧称Carbon Disclosure Project)。機関投資家などと連携し、企業や自治体に対して環境問題対策に関する情報開示などを求め、調査・分析を実施

産業ガスというサステナブルなビジネス

三木:産業ガスの製造で重要な空気分離の工程は、原料の空気から酸素、窒素、アルゴンを生成するプロセスです。これらの生成物は最終的に自然界に戻りますし、廃棄物もほとんど出ません。また、空気分離のための蒸留は非常に低温でなされるので、電気は使うものの、化石燃料を燃やすわけではありません。原料が空気なので、当然サプライチェーンのリスクもありません。こうした製造過程における環境負荷低減に加えて、もう一つ重要なポイントは、製品そのものによる貢献です。ガスはさまざまな工業プロセスの環境負荷低減に貢献しています。また、ガスの封入により食品の賞味・消費期限を延長することは、食品ロスの削減につながります。このように産業ガスとは、実は非常に環境親和性の高いビジネスなのです。さらに、保温・保冷可能なサーモス製品は、エネルギーロスの削減に貢献しています。ただ、今触れたサーモス事業以外はBtoB領域が中心なので、一般の投資家の方々には理解しにくい面もあるでしょう。こうしたことを我々はもっと発信していく必要があると考えています。

ユリアテ:まったく同感です。私たちはガス・アプリケーションによってお客さまの環境負荷削減に大いに貢献できるのです。ガスを安全に供給するだけでなく、ガスを使っていただき、お客さまの作業プロセスを改善することで、サステナビリティ推進に貢献しているのです。

三木:当社グループが新体制で今後追求すべきは、「総合力」と「遠心力」だと思います。各事業会社の自主性を尊重し、言わば遠心力を働かせながら、グループ内でシナジーを生み出す総合力を同時に育てていきたい。サステナビリティ分野でも、そうしたシナジー創出の可能性が大いにあるはずです。

ユリアテ:まず、ガス・アプリケーションの技術共有を促進することで、環境にやさしい事業や商品の開発を一緒に進めていくことができるでしょう。製造工程では、CO2排出量や水使用量の削減に向けた協力も考えられます。こうした日欧間の技術共有をさらに強化していきたいと望んでいます。

日本酸素ホールディングスグループの一員として

三木:我々とイナーキさんのやりとりが始まったのは経営統合前の準備段階でしたよね。その頃、この統合についてどのような感想をお持ちだったのでしょうか。

ユリアテ:どの企業が私たちを買収するかという結論が出る前から、大陽日酸(当時)という会社には好印象を持っていました。この会社とならアジア、北米、欧州、どのビジネスもぴったりマッチすると考えていたので、このような結果になって非常にうれしく思います。

三木:NGEに参加していただいたことは、収益以外の面でもグループにとって非常にいい刺激になっています。統合にあたってはNGEの自主性を最大限尊重しましたし、NGEの皆さんも、今までのやり方を継続できる形でグループに入っていただけたのではないかと思います。

ユリアテ:今回こちらが特に苦労した点はないのです。強いていえば、個人として知らない者同士ということがありましたが、日本の皆さんも私たちの会議によく来てくれますし、私たちも日本に何回か足を運んだので、その問題はすぐに解消しました。相手の顔がわかるようになることで、ずいぶん統合が促進されたと思います。

三木:いわゆるPMI※5のプロセスは本当にスムーズで、互いに行き来するうちに、自然に信頼関係が構築されていきました。むしろ大変だったのは一緒になる前の段階で、その頃はお互い別企業で守秘義務もありますし、ほとんどが電話会談ですから、相手の様子がよくわからないのですね。高圧ガスを扱うこのビジネスで、いちばん大切なのは「安全・安心」の部分です。経営統合した日から我々は運命共同体なので、それまでの間にもろもろのすり合わせを完了していなければなりません。早く一緒になって信頼関係を構築したいと思っていました。

ユリアテ:私も同感です。ケンさん、コロナ禍が収まったらぜひまたこちらにいらしてください。私たちの相互理解をさらに深める絶好の機会になるはずです。今後ともしっかり協力していきましょう。

三木:ありがとうございます。イナーキさんのこともNGEの皆さんのことも、心から信頼しています。コロナ禍で世の中の働き方やライフスタイルが変わる中、我々のビジネスもよりサステナブルになり、かつ、より持続可能な社会の実現に貢献しなければなりません。今回のホールディングス化を機に、グローバル・サステナビリティの推進に向けた協力体制を一層深化させていきたいと思います。

※5 Post Merger Integrationの略。M&A後の統合プロセス

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