座談会① これからの日本酸素ホールディングスを担う人財

大陽日酸(株) 執行役員 人事部長 亘 聡と大陽日酸(株) メディカル事業本部 SI事業部 SIイノベーションセンター 開発課 池田 明夏里と上海大陽日酸気体有限公司 出向・総経理 齋田 光弘と大陽日酸(株)エンジニアリング本部 PEC エンジニアリング部 プロセス計画課 藤田 真也の写真

大陽日酸(株)執行役員
人事部長
亘 聡

大陽日酸(株)メディカル事業本部 SI事業部
SIイノベーションセンター 開発課
池田 明夏里

上海大陽日酸気体有限公司
出向・総経理
齋田 光弘

大陽日酸(株)エンジニアリング本部
PEC エンジニアリング部 プロセス計画課
藤田 真也

※ 役位・所属・役職については2020年7月16日(取材日時点)の本務を記載しています。

2020年10月1日の体制・商号変更を経て、私たちは「日本酸素ホールディングス」として新たなスタート地点に立ちました。その転換期を迎える中で、これからの日本酸素ホールディングスに必要な「人財」について、人事部長であり執行役員である亘と、最前線で働く社員3名が語り合いました。

日本酸素ホールディングス入社の決め手

亘:まずは皆さん自己紹介も兼ねて、これまでのキャリアについて語っていただければと思います。

藤田:私は2009年に入社したので、もう12年目ですね。もともと「プラントをつくりたい」と思って入社したのですが、その前にはまずプラントについて知らなければいけないと思い、最初の配属先に工場を希望しました。それが叶って、名古屋のサンソセンターに3年間勤務し、実際にプラントが動いているのを見ることができたのはすごく貴重な経験でした。今は、エンジニアリング本部のPEC エンジニアリング部プロセス計画課というところにいます。プラント設計の部署で、現地に行くという機会が現在の部署ではあまりありません。3年間の工場勤務で、新しいプラントを設置した後にどのようにプラントを運用するかがわかったので、その経験を設計に生かせる点は、今の自分の武器になっていると思います。ですので、入社時に手を挙げてよかったと思っています。

池田:大陽日酸という会社は産業ガスがメインの会社ですが、私のいるメディカル事業本部のSI事業部は安定同位体を扱う部署です。安定同位体をどのように使用すればお客さまに利益があるのか、その用途開発を担当しています。産業ガスの会社で安定同位体を扱うと言うと不思議に思われるかもしれませんが、空気から酸素・窒素・アルゴンを分離する同じ原理で酸素の16、17、18の同位体を分けることができる―実は根幹の技術が産業ガスと共通しています。SI事業部は大学や病院、官公庁の研究所、製薬会社など専門性の高いお客さまが多い部署なので、さまざまな要望を正確に聴き取る、肌で感じる、掘り起こすことを基本に、お客さまとのコミュニケーションや対話を大切にしています。学会やシンポジウムなどで講演させていただくこともあり、積極的にお客さまとの接点を多く持つようにしています。オープンな雰囲気で直接対話できる機会がある学会やシンポジウムでは、お客さま自身が気付かない潜在的なニーズが隠れていることも多いという気付きもありました。お客さまと対話して、表面的に表れることだけではなく、根本的な問題を見つけて、「このような解決方法はいかがでしょうか」「このような方法もあります」と解決案を提示していく。ときには私たちの商材を使わない方法で解決することもあるのですが、それでも私たちを信用して相談していただくということが一番重要だと思っています。

※ Stable Isotope(安定同位体)

齋田:私はこの中で一番年上ですが、現在は上海大陽日酸気体有限公司という、中国の現地法人の社長を務めています。上海大陽日酸気体は、空気分離装置と呼ばれるガスをつくる大きなプラントを有し、そのガスを自社の輸送部門が配送、販売は営業部門が担い、お客さまの構内に設置するガス供給に必要な設備は、技術部門が設置からアフターサービスまで対応しています。ガスをつくるところからご使用いただくお客さまと接するところまですべてを担う、言わば、「ミニ大陽日酸」のような会社です。私自身は入社が1997年なので、2020年で24年目になります。最初は東京支社のガス営業部門で酸素・窒素・アルゴンなど一般ガスの販売に従事し、その後、2004年より本社でガスの新規拡販に従事していましたが、当時、国内で当社のガスを使っていただいていたお客さまが中国やタイなどに進出するケースが増加していました。せっかくなら中国、タイ、あるいはインドでも私たちのガスを使っていただきたいということで、2004年以降、海外現地法人のサポートも行いました。そして、2011年に上海大陽日酸気体に赴任し、最初は副社長として営業の責任者、2015年から社長として、経営全般を担当しています。

亘:一番大変だったことは何ですか。

齋田:そうですね、直近で言うと、社長に就任した2015年は会社が赤字でした。そのときは自分なりに、どのようにこの会社を黒字にして利益を出せるようにするかということに悩みました。やはり、社員が中国人なので、日本の常識は外国人の非常識ではないですが、私たちの考え方とは大きく異なっています。一方で、海外現地法人では日本人のできることが限られていますので、細かいことは全部ナショナルスタッフにやってもらわないといけません。いかに私たちの熱意を伝えて彼らのモチベーションを上げていくか、一緒になって会社の業績を上げるか、そのようなところが最初は苦労しましたね。

亘:当社グループでは、子会社や関係会社の社長というと、大体は社歴が長い人たちが就任することが多い中で、齋田さんは非常に若くして社長となりました。サクセッションプランという意味では大変よい事例だと思うので、本当はもっと齋田さんのような人を増やしたいですね。若いうちに、トップでなくてもいいと思うのですが、No.2ぐらいになって、会社全体を見ていくということを皆さんに経験してもらいたいと思っています。

お客さまとの信頼関係が差異化要素となる

亘:皆さんが仕事をする上で大切にしていることを教えてください。

齋田:私が営業を担当していたときに大切にしていたのは、「誠実さ」や「真面目さ」です。なぜなら、ガス自体は差別化できないので、当社の窒素も他社さんの窒素も、色もなければ匂いもないので、差異化が難しい。当社製品を選んでいただくためには、やはり営業マンの熱心さだったり、一生懸命さだったり、プラスアルファの部分が極めて重要であるということを感じます。

池田:プラスアルファの話で言うと、SI事業部の一番の主力商品は「Water-18O」という、がんを早期発見するために活用されるPET診断に必要な原料ですが、実は他の用途でも使うことができます。例えば「Water-18O」と私たちの開発した周辺技術をセットでお客さまに提案して、プラスアルファの付加価値を採用していただくように努力しています。

齋田:ガスの営業も同じで、まずお客さまの困っていることは何なのか、お客さまが求めていることは何なのかということを把握し、それを解決するための提案をしていくことが非常に重要で、それが信用を勝ちえる上でも大切なことだと思いますね。私は、海外にいることも影響しているかもしれませんが、「自分の殻に閉じこもってはいけない」「常に一段高い視座から物事を考える」ということを常に意識して仕事をしています。中国は発展のスピードが速いので、自分自身も変わっていかなければ追い付けません。また、世界の産業ガスメジャーと戦っていくためにも、自分自身が変わっていく必要があると思います。一緒に働いている仲間も日本人ではないですから、中国人の考え方のよいところを取り込んで、自分の殻を破っていく。いつまで経っても「日本人はこうだ」という先入観を持っていたらうまくいかないということは強く感じます。

藤田:私もそういったことは常に意識しています。私は技術者ではありますが、お客さまから「空気分離装置を買いたい」と言われたときに、営業の方と一緒に「どのような装置にしようか」ということを考えることがあります。技術者としては、単によいものをつくるということが重要ですが、その「よいもの」の内容はお客さまによって変わるので、提案するときにはお客さまの言葉に表れていない要望をくみ取ることを心がけています。また提案する際には、お客さまや関係者にどのような影響が出そうかということを予測するように心がけています。場合によっては別の対策を準備することもあります。Aさんがきっとこう動いて、その先のBさんがこうなるだろう―そのような「先を見る」という考えを持って行動するようにしています。

池田:今、藤田さんのお話を聴いていて、仕事内容や扱う商材は違っても、考えていることは大体似ていると感じました。彼とは同期なのですが、新入社員の頃から同じ研修を受けて10年以上経ち、同じような考えに至ることに感動しました。私は、「安定的にパフォーマンスの信頼性を担保する」ということを意識しています。産業ガスも安定同位体標識の試薬も、先ほど申し上げた「Water-18O」も、安全で安心であるということは非常に重要なことです。私がいるSI事業部は、技術担当としてお客さまと接することが多いのですが、私たち技術担当者のパフォーマンスはもちろんのこと、誠実に対応すること、熱意を持って多角的に提案すること、その裏付けとなるデータはしっかり持っていること―そういったことを積み重ねて、安心感や信頼性につなげていきたいと思っています。

「The Gas Professionals」の本当の意味とは

亘:日本酸素ホールディングスになっても、「進取と共創。ガスで未来を拓く。」「The Gas Professionals」という理念は変わりません。この「The Gas Professionals」は変えない、というか変える必要もないだろうと思っています。それぞれ皆さんはどのようにとらえているのですか。

齋田:私自身は、「The Gas Professionals」についても「誠実さ」や「実直さ」という意味合いでとらえています。ガスを切らしたら、例えば製鉄所などの工場が止まってしまいます。そうすると、鉄をつくれなくなってしまいます。そういったお客さまにインフラの一部としてお届けしているので、その供給責任は非常に重要です。でも、実はそれはお客さまからしたら、蛇口をひねったら水が出てくるのと同じように当たり前で、バルブをひねったら窒素が出てくるとか、そのぐらいの感覚なのです。インフラとしての使命、ガスをきっちり、安全に届けるという「誠実さ」や「実直さ」のようなものが私たちプロ集団としての仕事だと思っています。お客さまの困りごとを誠実に聴いて、何とか一緒になって解決したいという姿勢、それが「The Gas Professionals」だと思いますね。

藤田:「The Gas Professionals」なので、「ガスのことは任せろ」ということですよね。私たちのいるエンジニアリング本部では、「技術的なところは任せなさい」ということかと思います。ただ、それが一人で全部解決できればもちろんよいのですが、なかなかそういうわけにはいかないので、この「集団」とあるとおり、それぞれの得意分野を生かして、いろいろな人に手助けしていただき、逆に手助けもしながら、お客さまに対してよりよい提案をしていきたいと思います。結局最後のゴールは、お客さまにとっての一番適切なソリューションを提案するということです。そのゴールにアプローチするためにいろいろな人が協力し合って、達成していく、それが「The Gas Professionals」という集団だと思います。最近欧州の事業が増えて、私も実際に欧州の技術者たちと打ち合わせをしましたが、やはりPraxair, Inc.という会社自体はもともと大きいので、技術力もあって、見習うべきところはたくさんありました。せっかくそうした人たちが仲間になったので、技術面はもちろんマネジメントの仕方なども吸収し、そこからさらに私たちなりに発展させていく。それが よりProfessionals度合いを高めてくれると思います。

池田:社内リソースはどうしても限られているので、自分たちだけでお客さまのニーズを解決したり、新しい商品を開発したりするには当然限界があります。お客さまと協働して課題解決し、新しい製品を開発するなど、コミュニティを広げていくことが必要だと思います。現状でも、大学や研究所など社外にネットワークがあり、これを活用しながら新しい価値をつくっている最中です。新製品のコンセプトを考える段階では潜在的なニーズを掴みにいく「進取」で、製品を具体的な形にしていく段階は「共創」で、社外とのネットワークを使いながらブラッシュアップしていこうと思っています。

藤田:私は、上司から言われることだけではなくて、割と自分の好き勝手にやらせてもらっています。営業の担当者とも直接やり取りしながら、自分からどんどん提案すると意外なくらい採用していただける。そうしたことが何回かあって、それは面白いと感じます。当社グループは、積極的に「やらせてください」と前向きに言えば、経験などが然るべき時期になっていれば任せてくれるという雰囲気は全体的にあると思います。実際そういう経験もさせていただきました。

池田:私の部署も放任状態です(笑)。手を挙げたときにも、「やめておきなよ」と止められることはないですね。ある程度「これでいける」という情報や、裏付けとなるデータを集めたりできれば背中を押してくれますし、その雰囲気や風通しは非常によいですね。

これからの日本酸素ホールディングスグループに必要な人財

亘:今後日本酸素ホールディングスとして、より一層グローバル化が進みます。そうなったときに、どのような人財に当社の未来を任せていきたいですか。

藤田:私が入社したのは10年前ですが、10年前にはこんなに大きな会社になるとは思ってもいませんでした。米国もアジアも欧州の市場も大きくなっていますし、まさか自分が出張で欧州に行くなんてまったく思っていなかったので、どんどん状況が変わっていると感じています。したがって、どこまで柔軟に対応できるかということが問われると感じています。「The Gas Professionals」としてプライドを持って軸のぶれない、けれど柔軟でもある。そのようなバランスの取れる人財が重宝されると思いますし、自分もそのようになりたいと思います。

齋田:今、上海大陽日酸気体を任せてもらっていて思うのは、リーダーの強い意志が一番大切であるということです。「これは絶対成し遂げる」「これはみんなでやるんだ」という強い意志を持って、成し遂げるというパワーをまず持たなければいけないということと、それをいかに周囲に浸透させていくか―それにはいくつかやり方があると思いますが、同じ視点で一緒に議論して、「ああ、そういう問題があるね。じゃあ、こういう方法はどうだろうか」「その方法いいね」とか、一緒に解決策を探していくことが大切だと感じます。特に海外では価値観も違いますし、多様性を持った人たちの意見を取り入れることで、新しいものをつくり出すことができると思います。藤田さんも言っていたように、信念はぶれないほうがよいのかもしれないですが、あまりにも凝り固まって多様性を受け入れられないと、新しいものも生まれません。多様性を受け入れて、「自分も変われる、新しいものをつくろう」と思えるような柔軟性を持った人財が、今後は必要ではないかと思います。

池田:そうですね。今、齋田さんがおっしゃったことと重複しますが、私が在籍しているSI事業部には中途採用の方が非常に多くて、研究者や、ベンチャー企業を立ち上げた人などが中途で入社されてきたりします。当社の中でも中途採用の方が多い部署であると思いますが、そのような方たちと一緒に仕事をしていると、やはり視点が違います。自分だけだと視野が狭くなってしまう傾向があるのですが、それぞれ異なるキャリアを持つ方の視点の違いによって議論も活発になりますし、よく揉まれたビジネスプランになるという実感があります。さまざまな視点を持ったスペシャリストたちに当社に入社していただくとか、また逆にスペシャリストだけでなく、ジェネラリストやマネジメント専門の方が中途で入ってこられたら、どのような相乗効果が生まれるだろうかという期待はあります。

亘:正直、社員は、これまでの価値観に引きずられてしまっているところもあると思います。今までのビジネスモデルが安定していたため、恒常化しているような部分を多様性によるイノベーションで打破していかなくてはいけないと思います。理想形で言えば、日本、米国、欧州、アジア・オセアニア、サーモスを含めて、どこの地域にも優秀な人財がいるということですし、そうしていかなければならないと思っています。社員のもっと成長したいという意識を喚起すべく、制度も含めて整備し、モチベーションを上げていかなければならないと考えています。今回、皆さんの本音が聴けて、頼もしく感じました。日本に限らず、全世界で理念を共有し、未来を切り拓いていきましょう。ありがとうございました。

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