サステナビリティトピックス(環境)

日本酸素ホールディングスグループは、革新的なガスソリューションにより社会に新たな価値を提供し、あらゆる産業の発展に貢献するとともに、人と社会と地球の心地よい未来の実現をめざしています。こうした想いを社員全員が共通認識として理解するグループビジョンに込め、グループ一丸となってサステナビリティ経営を推進しています。

サステナビリティの取組みは、グローバル各地で多岐にわたり展開しており、人、社会、そして地球の課題解決に貢献していくことが、社会価値と経済価値を同時に向上させるとともに、当社グループの企業価値の向上にもつながっていくと考えています。

環境日本沖縄をはじめとする世界のサンゴを保全する活動を支援

日本酸素ホールディングス株式会社は、2024年7月より沖縄科学技術大学院大学(OIST)の「OISTサンゴプロジェクト」にスペシャルパートナーとして参画し、環境DNA技術やゲノム解析を活用したサンゴ礁のモニタリング・保全活動を支援しています。この取り組みと連携し、同グループのサーモスは沖縄限定デザインの真空断熱ケータイマグを発売し、売上収益金の一部を、日本酸素ホールディングス株式会社を通じて、サンゴ礁を保全する本プロジェクトに役立てております。さらに、同グループの大陽日酸は「チーム美らサンゴ」にメンバー企業として参画し、サンゴ苗の植え付けを通じて生物多様性の保全と環境意識の向上に貢献しています。グループ全体で連携し、沖縄や世界のサンゴの保全と持続可能な未来の実現に取り組んでいます。

環境欧州持続可能な輸送のための、初の水素トラックを導入

過去5年間、Nippon Gases Europeはドイツで製品配送にガス燃料車両を使用しており、当社のすべてのソリューションにおける持続可能な輸送の実現に向けた取り組みを進めています。2025年1月には、当社初となる水素トラックを導入し、自社製品(特にドライアイス)の配送にこの車両を使用するという、産業ガス業界において自社製品の配送に水素トラックを採用した初の企業となります。水素トラックは排出ガスゼロの代替手段であり、当社のトラックはThe Bad Hönningen siteから周辺地域のお客様へ日々ドライアイスを配送しています。従来のディーゼルトラックと比べて年間最大69,000kgのCO2排出削減が見込まれます。車両は通気口付きのボックス型車体を備え、最大航続距離は450km、燃料補給は15分以内でのフル充填が可能です。

環境日本カレット熔解炉向け水素混焼酸素富化バーナを開発

大陽日酸は、株式会社オハラと温室効果ガス(GHG)排出削減を目的とした新型カレット※熔解炉に使用する水素混焼酸素富化バーナを共同で開発しました。
開発した水素混焼酸素富化バーナは、カレット熔解炉の燃焼に用いられ、酸素濃度および天然ガスと水素の混合比率を適宜切り替えることが可能です。模擬カレット熔解炉試験では、酸素濃度を25%、30%、40%の3条件および水素混焼率を10%、20%、30%の3条件で実施し、いずれの方法でも、空気バーナに比べて、最大62%から29%のGHG排出削減を達成しました(詳細は図1参照)。また、従来の空気バーナと同等の加熱性能(昇温性、均熱性)を持ち、排気ガスの中に含まれるNOx濃度は排出基準値を下回る結果となりました。
今後も当社はカーボンニュートラル(CN)へ向けた様々な工業炉プロセスへの酸素燃焼技術適用に向けた技術開発を進めます。

※ カレットとは細かく砕いた破片状のガラスのこと。

環境日本CO2排出量を80%削減した酸素燃焼技術を用いた省エネ型の熱処理用ガス変成技術を開発

大陽日酸は、酸素燃焼※技術を利用した熱処理炉向け変成ガス発生プロセスを開発しました。
従来技術ではLPガスや都市ガスなどの炭化水素系ガス、空気とニッケル触媒を用いており、電気加熱による多量の電力消費が必要でした。当社は、長年培ってきた酸素燃焼技術により、触媒反応で求められる熱量を可燃性ガスの酸素燃焼で発生する熱によりまかなうプロセスを開発することで、大幅なエネルギー削減が可能となり、80%のCO2排出削減を達成しました。開発したプロセス技術を活用し、浸炭、焼鈍、焼結などの熱処理を行うユーザーをターゲットとして、熱処理炉向けの実用検討を進め、本技術の早期の商品化を目指します。

※ 酸素燃焼は、支燃性ガスとして、酸素あるいは酸素濃度を高めたガスを用いた燃焼のことです。

図 酸素燃焼技術を利用した熱処理炉向け変成ガス発生プロセス

環境日本ガラス製造プロセス向け酸素燃焼バーナ「Innova-Jet® Forehearth」実証

大陽日酸とNippon Gases Euro-Holding S.L.U.は、欧州の顧客の生産設備であるフォアハース※に「Innova-Jet® Forehearth」を導入し、実証試験を実施しました。従来12基設置されていた空気燃焼バーナを「Innova-Jet® Forehearth」4基に削減し試験を行った結果、局所過熱等の異常なくフォアハースを均一に加熱できること、また従来と比較して燃料を65%削減できることを実証しました。当社は、今後もガラス製造プロセスをはじめ各種工業分野のCO2排出量を削減しカーボンニュートラル(CN)社会実現に貢献するため、様々な工業炉プロセスへの酸素燃焼技術適用に向けた技術開発を進めています。

※ フォアハースはガラス溶解炉で溶融されたガラスを、瓶や繊維に成型する成型機に分配する役割を担っており、長いトンネル状の形状を有しています。フォアハースではガラスを溶融状態に維持するために、フォアハース内は均一かつ高い温度に保つ必要があります。

環境日本水素燃焼式排ガス処理装置「Blisters Burner H2」を販売開始

大陽日酸は、水素(H2)ガスを燃料にすることで燃料由来の温室効果ガスを排出しない、半導体分野向け排ガス処理装置の販売を2024年4月より開始しました。本装置は水素火炎を処理ガスに効果的に接触・混合させることができるバーナ部構造とすることで、従来の化石燃料を用いた燃焼処理と比較して、PFC※除害において30~50%のエネルギー削減が可能となりました。また、従来の化石燃料を用いた既存製品「Blisters Burner®」から、軽微な変更でH2燃料仕様に変更することができる構造としたことも特徴であり、将来的なH2燃料需要の増加を見込んだ設計となっております。
今後も世界的なカーボンニュートラルに対する取り組みなど、時代に合わせた最適な排ガス処理装置を開発・販売してまいります。

※ FCは炭素とフッ素が結合した化合物のこと。

「Blisters Burner H2」の外観

環境日本日本液炭株式会社宇部工場の使用電力全量をCO2フリー電力に切替え

大陽日酸株式会社のグループ企業である日本液炭株式会社は、液化炭酸ガス及びドライアイスを製造している宇部工場(山口県宇部市)の使用電力全量を2024年6月1日から、中国電力株式会社が供給する、CO2フリー電力※に切り替えます。これにより1年間の電力使用量に対するCO2発生量は約7,200トン削減されます。
宇部工場では隣接企業のアンモニア製造時の副生ガスを原料として、液化炭酸ガス及びドライアイスを製造しております。今回の切り替えにより同工場からの製品は、副次再生原料とCO2フリー電力で生産されることになります。

※ 発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギー電源(水力、太陽光など)に由来するCO2フリー価値付きの電気のこと

環境米国世界最大級のDACプラント実現へ向けて

2025年4月、Mathesonはテキサス州ペンウェルに最先端の空気分離装置(ASU)「Penwell」の稼働を開始しました。このASUは、1PointFive社が開発した世界初のダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)施設に不可欠な酸素とクリーンドライエアーを供給します。DAC施設は大気中のCO2を直接回収し、近隣で安全に地中貯留することで、気温上昇を1.5度以内に抑えるという国際目標の達成に貢献します。ASUから供給される酸素は、DACの化学反応を効率的に進めるために重要な役割を果たし、大気中のCO2の回収と永久貯留を可能にします。さらに、DAC施設とASUは大規模な太陽光発電による100%再生可能エネルギーで稼働しています。この技術が成功すれば、1PointFive社をはじめとする企業が世界各地に複数のDACユニットを備えた「DACハブ」を構築する計画があり、MATHESONもこの流れの中でさらなる成長とASU施設の建設機会を見込んでいます。

環境欧州ベルギーのASUプラントにおける水の節約イニシアティブ

ベルギーにあるリロ、ロンメル、ズウェインドレヒトの空気分離装置(ASU)施設では、水資源の有効活用に向けたさまざまな取り組みが進められています。ASUは冷却工程で多くの水を消費するため、環境への配慮が重要です。リロでは、空気圧縮機から出る凝縮水を回収して冷却塔に再利用する仕組みを導入し、年間で最大2万立方メートルの飲料水の節水を実現しています。ロンメルでは、隣接する運河の水を冷却用に約5万立方メートル利用。さらに、圧縮機の凝縮水や雨水も活用することで、運河水の使用量を約2%削減しています。ズウェインドレヒトでも冷却塔の補給水の使用削減を目指し、BLACからの凝縮水を1日約20立方メートル再利用。さらに、旧冷却水槽から雨水を回収し、週あたり平均263立方メートルの節水につなげています。
これらの取り組みは、工場における水使用の最適化と持続可能な運用の実現に向けた、継続的な努力の一環です。

環境欧州Nippon Gases UK LtdとSuttons Tankersは、HVO燃料の試験を開始

Nippon Gases UK LtdとSutton Tankersは、物流業務における二酸化炭素排出量削減を目的とした3ヶ月間のHVO(Hydrotreated Vegetable Oil)燃料の試験運用を開始しました。両社の長年のパートナーシップの一環であるこの取り組みは、最初の1ヶ月で87トンの排出量削減という有望な結果をすでに示しています。この試みは、HVO燃料の長期的な利点を探求し、持続可能性の目標とカーボンニュートラルの未来に貢献することを目的としています。

環境日本CO2回収装置の適用可能な原料CO2濃度範囲を拡大

大陽日酸は、2023 年4月に販売を開始した、「10ton/日規模 二酸化炭素(CO2)回収装置」の適用可能な原料 CO2濃度範囲を拡大し、幅広いCO2排出源からのCO2回収を可能にしました。これまで培ってきたガス分離精製技術を活かし、CO2回収装置の適用可能な原料 CO2濃度範囲を従来の20-40%から20-60%まで拡大しました。これにより、より多くのお客さまに対して脱炭素ソリューションを提供できるようになります。当社はCO2 回収装置を様々なお客様に販売することを通じて、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

小規模タイプCO2回収装置(外観)

環境日本世界初、ガラス溶解炉の燃料としてアンモニアを利用した実証試験に成功

大陽日酸は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「工業炉における燃料アンモニアの燃焼技術開発」において、世界で初めて、ガラス溶解炉でのアンモニア燃料実証試験に成功しました。AGC株式会社(以下、AGC)のAGC横浜テクニカルセンターで、建築用ガラス製造炉にアンモニア・酸素燃焼*バーナ1対を導入しアンモニア燃焼技術の実機試験を行いました。試験では、ガラス溶解炉の温度を維持しつつ、排ガスに含まれる NOx 濃度が環境基準値を下回る結果が得られました。今後、スケールアップしたバーナ試験と、他拠点のガラス溶解炉での実証試験を行うことで、アンモニア燃焼技術活用の範囲を見極め、2026年度以降にガラス溶解炉への本格導入を目指します。

*酸素燃焼:
支燃性ガスとして、酸素あるいは酸素濃度を高めたガスを用いた燃焼のことです。

今回実証試験を行ったガラス溶解炉

環境欧州グリーン水素のみを燃料とする世界初の取鍋予熱装置を導入

Nippon Gases Europeは、カーボンニュートラルに関する取り組みをサポートする企業として、Sarralle社の協力のもと、CO2排出量ゼロを実現する、グリーン水素のみを燃料とした世界初の取鍋予熱装置をArcelorMittal社のSestaoプラントに導入しました。今回のプロジェクトは、現行の取鍋予熱作業を改善し、燃料を天然ガスからグリーン水素に転換することにより、CO2排出量を最小限に抑えることを目的としました。その結果、燃料としてグリーン水素のみを使用し、取鍋を加熱した場合、全ての条件において、必要とされる温度に昇温することが実証されました。

環境日本工業炉向け水素―酸素バーナを開発

大陽日酸は、水素ガスを燃料として用いる工業炉向け水素-酸素バーナを開発しました。同社酸素バーナのラインナップである「SCOPEJET」「Innova-Jet」「Innova-Jet Swing」は水素を燃料とする利用が可能となりました。水素ガスは工業炉向けのカーボンフリーな燃料として注目されており、大陽日酸では2021年度より水素-酸素バーナの開発に取り組んできました。日本国内では年間約11.2 億トンのCO2が排出され、そのうち35%を産業分野が占めており、多くの工業炉から排出されています。本技術を通して、水素エネルギーの社会実装および工業炉分野でのCO2排出量削減へ貢献します。

SCOPE-JETの燃焼火炎

環境日本水素-酸素を用いた粉体溶融球状化技術を開発

大陽日酸は、純酸素燃焼を用いた粉体溶融・球状化システム「CERAMELTⓇ」と水素燃焼技術を組み合わせ、半導体材料製造プロセスにおけるカーボンニュートラル実現に貢献できる無機質粉体溶融・球状化技術を開発しました。球状粒子は半導体封止材料等の樹脂充填剤として用いられ、半導体製品の性能向上や小型化に大きく寄与してきました。近年の半導体の使用領域拡大に伴い、製造過程における環境負荷低減に対する要求が厳しくなっています。当社が開発した本技術は、燃料に水素ガスを用いることで燃焼排ガス中のCO2 をゼロにし、製造過程における環境負荷低減に大きく貢献すると共に、製品中のカーボン不純物を低減した高品質な球状粒子の製造に貢献できます。

溶融・球状化前後でのアルミナ粒子の外観

環境日本燃料電池自動車(FCV)用水素製造の実証試験に成功

大陽日酸は、アンモニアから燃料電池自動車(FCV)の水素燃料に求められる品質仕様(ISO 14687:2019 Grade D)を満たす水素の製造実証に成功しました。カーボンニュートラルの実現に向け、当社はこれまで水素ガスの精製技術を開発してきました。これまで培った水素ガス精製の知見を基に、アンモニア分解炉と当社が開発した水素精製装置を組み合わせた水素製造試験を行い、製品水素が燃料電池自動車用水素燃料に要求される規格を満たすことが実証できました。今後はアンモニアから水素ガスを製造する装置の商品化を進めいきます。

試験装置外観

環境日本アジア・オセアニアタイにおけるトヨタ自動車のカーボンニュートラルの取り組みを水素供給で支援

大陽日酸およびニッポンサンソ・タイランドは、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ社)がタイで推進している、カーボンニュートラル社会実現に向けた水素の利活用の取り組みを支援しています。①水素を充填・供給ができる大陽日酸の独自開発のパッケージ型水素ステーション「ハイドロシャトル」を使用し、トヨタ社が行う物流における実証試験でFCトラックに直接水素を供給しました。②2023年12月22~23日の2日間、タイのブリーラムで開催された「IDEMITSU SUPER ENDURANCE SOUTHEAST ASIA TROPHY 2023」(10時間耐久レース)において水素エンジンカローラ「ORC ROOKIE GR Corolla H2 concept」への水素供給を行い、完走まで支援しました。

ハイドロシャトル(左)による水素供給の様子

環境日本NEDO「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」に「大規模外部加熱式アンモニア分解水素製造技術の研究開発」が選定

日揮ホールディングス株式会社(以下、日揮HD)、株式会社クボタ(以下、クボタ)、大陽日酸の 3 社は、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「競争的な水素サプライチェーン構築に向けた技術開発事業」(以下、本事業)に共同で応募し、採択されました。本事業において、年産 11 万トンの水素製造事業を想定し、輸入したアンモニアを熱分解して水素を得る「大規模外部加熱式アンモニア分解水素製造技術の研究開発」(以下「本研究開発」)に取り組みます。本研究開発は、液体アンモニアの気化、予熱したアンモニアガスの加熱分解、分解ガス精製による高純度水素製造からなるプロセスの最適化を目指すものです。日揮 HD は分解炉および全体プロセスの開発と共に実証を見据えた全体統括を、クボタはアンモニア分解管の研究開発を担当します。大陽日酸は水素精製装置の研究開発を担当し、カーボンニュートラル社会に欠かせない大規模な水素製造の技術開発に貢献します。

本研究開発におけるプロセスフローと分解炉のイメージ図

環境日本次世代電動航空機向け400kW級全超電導モータの回転試験に世界で初めて成功

大陽日酸は、九州大学先進電気推進飛行体研究センター、産総研、多数の企業と共に、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託事業において、次世代航空機の実現を目指し、超電導技術を使った高効率かつ高出力電動推進システムを開発しています。開発グループでは、これまで超電導線の交流損失予測、低減および大電流容量化技術の開発を進めており、これらを適用することで、回転機の界磁巻線だけでなく電機子巻線まで含めた全てを超電導化した全超電導モータを開発し、液体窒素をポンプで循環させる冷却システムと組み合わせて、世界で初めて回転試験に成功しました。今回の結果は、航空機の電気推進化、次世代航空機の実現に向けた大きな成果であり、引き続き実用化に向けた開発を進めるとともに、同システムの空飛ぶクルマへの適用も目指していきます。

400kW 級全超電導同期モータ

環境日本「生産性に優れたSi基板上GaN系パワー半導体向けMOCVD装置の開発」がNEDO事業に採択

大陽日酸は、国立大学法人名古屋工業大学・窒化物半導体マルチビジネス創生センターと共同で、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」に「生産性に優れた Si 基板上GaN系パワー半導体向け MOCVD装置の開発」を提案し、採択されました。本提案では、高い電気エネルギー変換効率を持つGaN/Si エピ基板を安定的に供給可能な世界最大級の次世代量産型MOCVD装置の完成を目指し、脱炭素社会の実現と国内産業の活性化に貢献します。